2013年7月6日

対流圏から考える南半球の価値

今から、10年くらい前、ヨーロッパにてお城に住んでいるような人たちと同じレベルで、同じコミュニティで暮らしている人について、とあるプロジェクトの立ち上げに関わったことがある。

その方は、世界中に土地やビルを持っているので、ミーティングの場所もグローバルだった。第1回目のミーティングは、カナダの島だった。ヨーロッパにいる秘書の方から、カナダ行きの航空券が送られてきた。

そんな世界をちょっとだけ垣間見たことがある。その時に聞いたのは、数十年前、ヨーロッパの金持ち連中は、世界中の「水源地」を押さえにいったと。たとえば、今から30年前、確かに日本でもスーパーにペットボトルやビン入りの「ミネラルウォーター」が売っていた。私の親も含め、よく話題にしたものだ。「誰がこんなもの買うのかね?」と。

でも、あれから30年。日本人で、一度もペットボトル入りの水を自分のお金で買ったことのない人は、どのくらいいるだろう。皆無だろう。ほぼ毎日、コンビニで買っている人すらいる。

ヨーロッパの金持ち連中には、今の姿がリアルに想像できたのだ。みんなが水にお金を払う時代が来ると。

最近では、中国などのお金持ちや会社が、日本の水源地を買いあさっているとも聞く。でも、それは、何十年も前のヨーロッパの金持ち連中がやっていたことの後追いでしかない。

実は、ヨーロッパの金持ち連中は、もはや水源地への興味はそれほどない。というか、今(正確には仕事をしていた時だから10年くらい前)彼らが買いあさっていたのは、土地である。

土地と言っても、投機が目的の不動産としてではない。水源地を買い「水」を押さえにいったように、「土」を押さえにいっているのだ。その土は、汚染されていないもの、つまり、安心な食物を育てることのできる土だ。

そのヨーロッパコミュニティに属する方が、カナダの島のとあるレストランで、いくらか計算するのもバカらしくなるようなワインと共に食事を楽しみつつ、ふとおっしゃった言葉を今でも覚えている。

「僕らの時代は、カナダのような場所がラストリゾートだったけど、君らの時代は南半球だね」と。

その時は、意味がよくわからなかった。でも、今は、私も南半球に主体的に関わるようになっている(今年の夏は、学生と共にNZの小さな街を拠点にして、次の時代のデザインをテーマとしたフィールドワークを行う)。その意味がわかるまで10年の歳月を要したのだ。

対流圏という概念を知ったのだ。グーグルで画像検索すると、たとえば、以下のような画像を見つけることができる。


北半球の空気は北半球で周り、南半球の空気は南半球でまわっている。人口分布や工業の分布を調べてみるといい。ほとんどが北半球に集中している。ついでに、原子炉の分布も調べてみるといい。何らかの事故が起こって、放射性物質が大気に漏れ出した場合、ほとんどは、この対流圏の空気の流れに沿って拡散することになる。

今度のNZFWにて、コーディネーターをしてくださる方の家(NZの南島にお住まい)の飲み水は、雨水だという。空気がきれいで汚れていないから、雨水が一番きれいで美味しいと。北半球に住む私には驚きであった。

その後、南半球に関わるようになると、世界中のお金持ちが、何でもないような土地を買っていることがわかってきた。私の勝手な予測は、「あ、土を押さえにいってるのかな」である。

気づく人はとっくに気づいて行動しているし、気づかない人はいつまでたっても気づかない。不確実性の高いこれからの時代。タレブの本の帯についていた言葉を借りるなら「ありえないなんて、ありえない」のだ。