2011年12月26日

高層建築時代の終わりの始まり

マレーシアの首都クアラルンプールにいる。夏にも訪問したので、今年2度目だ。はじめてこの街を訪れたのは、確か1998年のこと。会議の席上で、マハティール首相(当時)のアジア構想について、彼のアドバイザーを務めていた先生からレクチャーを受けたことをよく覚えている。

当時のマレーシアには、これから一気に成長を遂げようとする国が持つ独特の空気感があった。都市の再開発がいたるところで始まっていたし、空港や鉄道などのインフラ整備に力を注いでいた。

まだ、それほど高層建築が立ち並んでいなかったクアラルンプールだったが、ランドマークとなる建物はちらほらとあった。そんな中、圧倒的な存在感を放っていたのは、なんといっても「ペトロナス・ツインタワー」だ。そして、その地位は今も揺るがない。建築デザインとして、世界の中でも美しい建造物の1つだと言えるだろう(個人的には、好きな建築物トップ5に入る)。


滞在中のホテルからこのツインタワーまですぐ近くということで、久しぶりに行ってみた。相変わらず美しいが、はじめて見た1998年当時と違って、今はやや複雑な思いでこの建造物を眺めている。

国際エネルギー機関(IEA)が報告書で指摘しているように、在来型石油の産出ピークが2006年に訪れたのだとすると、これから先は石油の減耗期に突入するということになる。高層建築は、この石油時代を背景に20世紀的な都市計画が到達した1つの解答であったが、これからの時代には通用しないだろう。

都市計画に携わる人々は、行政も建築家もデベロッパーも、(都市中心部の大規模開発となると)恐らく未だに高層建築以外の解答を知らない(採算性、経済性という制約を無視するのならば多くのアイデアがあるのだろうが、現実的な選択肢になり得ていないという意味で)。感度の高い建築家の中には、20世紀的な高層建築に面白みを感じられず、「何かが違う」と思っている人は少なくないと推測するが、そんな彼らもオルタナティブを提示するところまで、次の時代のビジョンを描き切れていない。

次の時代は、エネルギー的に、大都市も高層建築も許してはくれなくなる。早晩そのことは顕在化することになるだろう。「ペトロナス・ツインタワー」的な時代は、確実に終わろうとしているのである(ペトロナス自身が、マレーシアの国営石油会社だというのもなんとも皮肉である)。


2011年も残り少なくなったクアラルンプールを歩いていて感じるのは、この国を私がはじめて訪れた1998年当時の設計図を忠実に実行していったのだなということだ。空港も、首都建設も、空港と首都とを結ぶ高速鉄道も、その中間地点に「人工的」に作ったITパークも完成した。しかし、そこで止まってしまっては、この街もこの国も失速してしまうだろう。少なくとも、20世紀に描いた設計図の延長線上に、これからの未来はない。

ツインタワーの示している「高層建築」という解以外の解を見つけ出す。これからの都市計画家であり、建築家であろうとする者にとっては、避けて通ることのできない宿題である。