2011年8月26日

IIUM


冬のニュージーランドを離れ、夏の(常夏の?)クアラルンプールにやってきた。マレーシアにおける「イスラームとインターネット」に関する調査を行うためだ。

到着翌日、早速、IIUM(International Islamic University Malaysia)を訪問する。KLの街中からはちょっと遠い。電車で終点まで行き、そこからまたバスに乗らなくてはいけない。多くの学生は、オンキャンパスに住んでいたり、この近くに住んで車やバイクなどで通っているという。

この大学は、マレーシアにいくつかあるイスラーム研究が出来る大学のうちの一つである。留学生も多く、国際色豊かだ。ほとんどの学生はムスリムだが、一部非ムスリムもいるという。

それにしてもキャンパスが広い。キャンパス内には、教職員や学生が利用できる「チャイルド・ケア・センター」がある。子供がいても研究・教育・勉強に打ち込めるというわけだ。こういった感覚は、欧米の大学に近いものがありそうだ。自分に子供が出来てから、子育て環境には敏感になった。その意味では、日本の平均的な大学よりも、こちらの大学の方が数段子供フレンドリーだ。ちょっぴり、うらやましい。


図書館も見学させてもらったが、アラビヤ語の書籍も含めてかなり充実している印象を受けた。もちろん、キャンパス内はwifiコネクションが整備されていて、大学のどこにいてもインターネットにはアクセスできる。

この大学を案内してくれたのは、私のアラブ人の友人だが、大学環境が整備されているのがうらやましいと、自国(シリア)と比較してため息をついていた。「いつかシリアもこのレベルになれば。。。」とも。

これまで、アラブ圏のイスラーム研究者と議論する機会がほとんどだったが、東南アジアのイスラーム研究者との対話は、また新たな視点を与えてくれ面白い。アラブ圏は、ある意味「モノ・カルチャー」社会の中でのイスラームであるが、マレーシアでは「多文化社会」の中でのイスラームという視点がいたるとことで垣間見られる(会話の中で)。

この国でも、アラブ圏にイスラーム研究のために留学する学生は多いが、アラブでの経験や学んだことを、そのままマレーシアに適用させるのは多少無理がありそうな印象を受けた。こちらの社会の文脈である種の「翻訳」をして、この社会の中で学んだ知識を活かしながら日々の活動を行っていくことが重要なのだろう。

最近では、中国系のマレーシア人の中にも、仏教からイスラームに改宗する人が増えているという。インド系の人にもヒンズー教からの改宗者がいるという。公共スペースでイスラームについて語ることが以前に比べて増えているし、容易になってきたとも教えてもらった。東南アジアのイスラームについて、もう少し本腰を入れて学んでみたい。今回の訪問は、いいスタートになりそうだ。

2011年8月22日

緑地の価値

クライストチャーチにやってきた。街の中心部は、地震の影響で入れない。一面、フェンスで囲まれている。なんとも、痛ましい姿だ。石造りの教会なども、(崩れ落ちないように)補強がしてあり、周りはフェンスで囲まれている。地震の爪痕は、街のいたるところに残っている。

それでも街は動いている。人々は生活をしている。旅をすると、決まって地元の人に人気のある(ないしはありそうな)カフェを訪れ、その街の空気を感じるようにしている。もちろん、その街に住んでいるわけではないので、「ここは!」と思って入ったカフェが「あんまり……」だったりすることもあるが、最近は嗅覚が鋭くなってきたのか極めて「当たり」が多い。今朝の朝食を食べたカフェも「当たり」だった。


「ガーデンシティ」の愛称もあるクライストチャーチには公園が多い。街に緑地が多いのである。その中でもひときわ大きく有名なのが「ハグレー公園」(Hagley Park)だ。宿が、この公園のすぐ脇にあることもあって、散歩はこの広大な公園の中。家族でゆっくりと、そして冬の澄んだ空気と穏やかな日差しを浴びながらの散歩は気持ちが良い。


これからの都市の魅力を決める指標の一つに「緑化度」というのがあるかもしれない。もっとも、石油減耗の影響をもろに受けるようになると、かつてのキューバのように街の空き地という空き地は畑に変換され、イヤでも緑化度は上がるかもしれない。でも、今すでに、ある程度の緑化度を誇る都市には、やはりそれなりの魅力があると思う。

これからは、エンターテイメントのあり方も大きく変化することになるだろう。端的には、お金とエネルギーをかけずに楽しめるエンターテイメントへのアクセスをどれほど持っているのかということになる。ディズニーランド的なエンターテイメントは、はやらなくなるし、ああいったエネルギー浪費型のものは維持することも困難になるだろう。

その点、街中の公園や緑地はすぐれた資産だ。散歩はタダだし、他の散歩をしている人とのコミュニケーションも楽しい。すぐそばに、海があってマリンスポーツを楽しめる、というのもいいだろう。その都市の立地と周囲の自然環境は、やはり重要だと思う。

街の規模も重要だろう。あまりにも大都市ではいけない。おそらく、東京のようなメガロポリスの時代はもう終わったのだ。やがて多くの人がそのことに自覚的になり、メガロポリスを離れる人の数は、今後ますます増え続けるに違いない。大都市には、そこでもやっていくことの出来る人と、脱出できずにとどまらざるを得なかった人という形で、二極化した人々が残ることになるのかもしれない。

いずれにせよ、今はやっている都市が次の時代も引き続きその魅力を維持し続けるには課題が多い。そういう都市もあるだろうが、それほど数は多くないだろう。むしろ、今は全く注目されていないが「次世代的にはオモシロイ」という都市が新たに興隆してくることになるのではあるまいか。そんなことをとりとめもなく考えつつ、豊かな公園の緑地を思いっきり満喫した午前中だった。



2011年8月16日

Boat Shed Cafe


ニュージーランドでの目的地は南島の北端にある人口5万人程度の街ネルソン。ニュージーランドにおける石油ピークの研究組織ASPO-NZの本部がある街だ。近隣の郊外農村部と市街地とをパーマカルチャーの理論に沿ってデザインしようともしている。

確かに、この規模の街にしては、都会的だ。街の中心部にあるお店にも都会的センスを感じさせるものが多い。そして、オーガニックに関する関心が高いのも、ただの田舎町ではないという雰囲気作りに一役買っている。

晴天率もニュージーランド随一だといい、「サニー・ネルソン」という愛称で親しまれている。地理的条件と気候は、持ち運ぶことができない。これからの時代、その都市の魅力を左右する大きな要因は、周辺の自然の状況と気候条件だろう。暑すぎても寒すぎてもいけない。年間を通して、(エネルギーに過度に頼らなくても)人間が快適に過ごせる気候が望ましい。その点、ネルソンは、なかなか恵まれていると言えそうである。

こういう街は、移住者を惹きつける。才能を持った人々が、引き寄せられるように集まる。そして、彼らがまた街の魅力を上げていく。こうした正のループができあがると、これからの時代にオモシロイ都市ということになるだろう。

だから、こういう街には、都会的センスと地域の自然の恵みを活かしたような素敵なレストランも多い。中でも、(おそらく)ネルソン随一のレストランは、今日のブランチを楽しんだ「Boat Shed Cafe」だろう。たまたま、今借りているアパートの大家さんの息子さんがオーナーシェフをやっている。

オーダーしたのは、「シェフのお任せコース」。地元のシーフード主体の料理はどれも絶品だった。ニュージーランドの中でも、コーヒーを美味しく飲ませてくれる店だとも思う。なによりも、景色が最高だ。

魅力ある人々を惹きつける都市。最近の研究テーマの中心をなすものだ。実際に、いろいろな都市を訪れ、(擬似的にでも)居住体験をして、自分の体でその要素を導き出し、納得できる結論を理論化してみたい。





2011年8月14日

「常識」の相対化


ニュージーランドにいる。初めての国だ。南半球に来るのは人生で2度目。実は、初めての海外は南半球だった。14歳の夏だった。初めて見た、オーストラリアの広大な空とあまりにも青い色に感動したものだ。

あれから20年以上。いろいろな国を旅したが、考えてみるとどの国も北半球に位置していた。飛行機で移動することで不思議な感覚を味わうのは大抵「時差」だった。日本を夕方に飛び立ち、アメリカに朝到着する。でも、日付は、飛び立った夕方のまま。初めて味わったときは、不思議な感覚だった(その後、時差ぼけにしばらく悩まされた)。

冬の寒い中、日本を飛び立って、東南アジアに行くとそこは夏。半袖と短パンで街を歩き、建物の中は効き過ぎなくらい冷房がついている。これもこれで不思議な感覚だった。

オセアニアに来ると、「時差」はほとんどない。ニュージーランドでも、日本との時差は3時間だ。時差は、一日単位での「ずれ」だが、南半球では半年単位でずれることになる。季節が逆になるためだ。日本のニュースをネットで見ると、「熱中症」という文字が目に入ってくるが、こちらは冬。日向は暖かいが、夜などはかなり冷え込む。早朝、レンタカーのフロントガラスに霜が降りていた。

旅の醍醐味は、日常生活で染みついた「常識」がもろくも崩れ去ることではないだろうか。少なくとも、自分自身はそんな感覚が好きで、旅を続けているようなところがある。8月は「暑い」という常識は、ここでは通用しない。「常識」を捨て去り、相対化して自分自身を見つめてみると、本当に大切なものなどが浮き上がってくる。

もうしばらく、ニュージーランドに滞在する予定である。8月の南半球を満喫しよう。