2011年6月29日

『アラブ諸国の情報統制』増刷決定


山本達也『アラブ諸国の情報統制:インターネット・コントロールの政治学』慶應義塾大学出版会、2008年。

上の著書の増刷(二刷)が決まったというご連絡を出版社の方から頂きました。ありがたいことです。


2011年に入ってから中東では多くの国で政治的な変化・変動を経験していますが、きっかけとなったチュニジアでもエジプトでもICTの発展と普及、そしてICTを利用したソーシャル・メディアが「革命劇」において重要な役割を果たしたと考えられています。

この著作が出版された2008年当時は、中東でも今のような形でソーシャル・メディアが広く普及しているという状況にはなかったため、本の中では今回の政治変動のメカニズムについて直接的な分析は行っていませんが、情報化が進展することによる「政府側の懸念とその政策的対応(インターネット・コントロール)」について主に論じています。

本書の着想は、2002年から滞在していたシリアでの経験から得たものです。当時から、様々な形でアラブ諸国の政治動向についての研究は行われていましたが、この先、大きな動きがあるとするならば、その時はインターネットや携帯電話に代表される「新しいICT」が重要な役割を果たすに違いないという思いから研究を続け、まとめたのが本書です。

本書の中で、当時の政府側とその規制をくぐり抜けようとする市民たちとの攻防の様子を分析し、「短期的には政権側が有利な構造があり、ただちに変化を及ぼすということは考えにくいが、中・長期的には大きな変化につながるかもしれない」という趣旨の記述をしました。フェースブックやツイッターなどの急速な普及によって、その「中・長期的展望に関する予測」が現実のものとなったのが、2011年だったのではないかと思っています。

本書が、今、中東で何が起こっているのか、情報化進展の背景にはどのような要素が絡んでいたのかなどを知る手がかりを提供できればと願っています。


ちなみに、以下のコラムでは、今回発現したようなメカニズムで政治変動が起きる可能性を指摘しています。このコラムでの「懸念」が現実のものとなったのが今だったのではないかと思っています。

山本達也「ケータイで群衆化するアラブの若者:「反イスラエル」ではない新しいデモの形」(JB Press、2009年7月8日)


また、革命後に書いた同様のメカニズムの説明としては、以下のコラムもあわせてご参照頂ければと思います。

Tatsuya Yamamoto, "The Mechanism behind the Egyptian ICT Revolution and Its Connotations"(The Tokyo Foundation、2011年3月2日)